自分をみつめる禅問答

対話形式で仏教について語られている。
対話といっても内容は架空のもので、話者A(禅僧)と話者B(仏教にやや懐疑的な(?)一般人)はいずれも著者。

読者がもつであろう疑問を話者Bが話者Aに問うてくれるので、大変読みやすい。

仏教によれば、自己の根拠は、自己以外の存在(著者はこれを非己と呼ぶ)から与えられる。この関係が「縁」と呼ばれる。
我々がモノ(人)に対して所有欲をもつとき、そのモノによって自己の存在意義を強固にしたいという構造ができている、という。

この世は苦である。だが、我々は死にたくないという欲求をもつ。これはどういうことか?
我々は自己が愛しいためだ。
ブッダは、「どの方向に心でさがし求めてみても、自分よりもさらに愛しいものをどこにも見出さなかった」と述べている。
この自己愛は非己から生じる。非己から何らかの形で愛された自己は、自己への愛をもつようになる。
仏教で自殺・殺人が禁じられるのは、この自己と非己の構造を否定することになるためだ。

この本には、「救い」は書かれていない。救われたいなら坊主に弟子入りしろ、でなければ自分で考えろ、と突きつける。