エンジニアとコミュニケーション

前職で学生と面談するとき、次の質問が非常に多かった。

「エンジニア(SE)にはコミュニケーション能力が求められると言われるが、何故か?」

答えやすい回答としては「プロジェクトはチームで進めるものだから」がある。私も就職活動中にいろんなエンジニア(や人事の方)に上記の質問をしたところ、このように回答いただいたことが多かった。

だが、この回答は本質ではない気がしている。

もちろん、チームで物事を成すために、それぞれの人間性を掴む、空気を読む、気を遣う、という能力も円滑なプロジェクト推進の助けにはなる。しかし、私が質問した皆様も、それ以上に開発特有の何かを感じているはずだ。

開発は、具体化だ。曖昧な要件から、具体の塊であるシステムを生み出す。その架け橋となるのが人間同士のコミュニケーションだ。すなわち、コミュニケーションは曖昧性を取り除いていく役割を担っているわけだ。ここで必要となる能力は、「他者との関わりの中で曖昧性を明らかにする、その曖昧性を取り除く手段を考案し共有する」能力、等となろう。前述の「空気を読む」といった能力とはむしろ真逆だ。「空気を読む」とは、曖昧性をあえて残したうえで他者と共感することだからだ(これらの能力を使い分ける必要があるのも難しいところかもしれない)。

つまり、冒頭の問いに対する答えとして、私は「曖昧性のないコミュニケーションが求められるから」と言いたい。