ドラッカーによるイノベーションの7つの機会
年末年始にドラッカーのイノベーションと企業家精神を読んだ。面白かったがが頭の中で整理しきれなかったので、その中から「イノベーションの7つの機会」をまとめてみる。
あるイノベーションは、いずれかの機会のみによって生まれるとは限らず、複数の機会の組み合わせによって生まれることもある。
1. 予期せぬことの生起
予期せぬ成功
- リスクが小さいはずだが、見逃されることが多い(否定されることすらある)機会。
- 「弊社のこの事業がなぜか成長しているが、本当に取り組みたい事業ではない」
- 予期していないため、観測・分析されないこともある。目にとまる仕組みを体系化する必要がある。
予期せぬ失敗
- 成功すると思っていたビジネスの失敗。予期せぬ成功と違って見逃されることは少ないが、機会であると捉えられることは少ない。
- 慎重に行われたビジネスであったら、想定と現実に差異があったことになる。差異こそが機会。
- 自身だけでなく他者の予期せぬ失敗からも学ぶことができる。
- 企業家たる者にとって、現実が変化した原因を知る必要はない。何が起こったかはわかっても、なぜ起こったかはわからないほうが多い。だが、なぜ起こったかはわからなくともイノベーションに成功することはできる。
2. ギャップ
- 現実にあるものと、あるべきものとの乖離。
- 定量的でなく定性的であることが多い。
業績ギャップ
- 需要が伸びているのに業績が伸びていない状態。
- 産業全体で生じていることが多い。
- 行動する前に、解決すべき問題を明確にし、既存の技術・資源を利用して解決策を考える。
認識ギャップ
- 産業内部の者が現実を誤って認識している状態。
- 「この問題を解決するためにこの分野に力を入れるべき」
- 問題を複雑に認識してしまっている状態に対し、より単純な方法を提供することでイノベーションとなることが多い。
価値観ギャップ
- 消費者が持つ価値観を生産者が誤って認識している状態。
- 「貧しい人たちが何を変えるかを知っているのは、彼ら貧しい人たちではなく私である」
- 生産者が提供していると思っているものを購入する消費者はほとんどいない。このとき、生産者は消費者が不合理であるとみなすが、ここにこそ機会がある。
プロセスギャップ
- ある業務プロセスに課題がある状態。
- 特定の産業に対して丁寧にヒアリングすることで明らかになることが多い。消費者は多くの場合、すでにそのギャップを感じている。
3. ニーズ
- ニーズによるイノベーションが成功するには5つの前提がある。
- 完結したプロセスについてのものである
- 欠落した部分や欠陥が1箇所だけである
- 目的が明確である
- 目的達成に必要なものが明確である
- 「もっとよい方法があるはず」という認識が浸透している
- また3つの条件がある
- 何がニーズであるかが明確に理解されている
- 必要な知識が手に入る
- 解決策が、それを使う者の仕事の方法や価値観に一致している
プロセス上のニーズ
- 状況ではなく課題からスタートする。誰もがそのニーズが存在していることを知っているが、手を付けられていない状態。
- ひとたび解決すると、そのイノベーションは標準となる。
労働力上のニーズ
- 機械/ロボットによる自動化など。
知識上のニーズ
- 研究開発によって満たされるニーズ。課題はすでに明らかになっている。
- プロセス上のニーズや労働力上のニーズよりも困難でリスクが大きい。
4. 産業構造の変化
- 産業・市場の構造は、内部の人間が感じるよりも脆弱である。
- 小さな企業が機会としてとらえ、大企業が損失を被ることが多い。
- 産業の外部からは機会、内部からは脅威とみえる。
- ここでのイノベーションは単純でなければならない。
- 以下の場合、ほぼ確実に起こる。
- 急速な成長
- 急速な成長に伴い、その市場のとらえ方、対応の変化
- いくつかの技術の合
- 仕事の仕方の急速な変化
5. 人口構造の変化
- 人口の増減、年齢構成、雇用、教育水準、所得などの変化。
- 可能性・リードタイムの予測が容易。
- 急速に、原因もわからず起こる場合もある。このケースを認めようとしない場合は敗者となる。
- 統計ではなく、街の観察によって変化の可能性に気づく場合もある(ただし統計がベースであるべき)。
6. 認識の変化
- コップの半分に水が入っているとき、「半分は満たされている」なのか「半分は満たされていない」とするのか。
- 1960年代から20年後、アメリカでは健康度が著しく上昇したが、多くのアメリカ人の不健康への恐怖は増大していた。健康に対する認識が変わっていた。
- やはり、原因はわからないことが多い。また定量的でない。定量化できたとしても、そのときにはイノベーションの機会には遅すぎる。
- 一時的なものか永続的なものか見分けがつきづらいため、小規模に始める必要がある。
7. 新しい知識の出現
- 技術的・社会的知識によるイノベーション。
- 実用化までのリードタイムが長い。市場で受け入れられるようになるには25年から35年を要する。リードタイムの長さは短くなっているとされているが、錯覚にすぎない。
- (所感: これはさすがに多少は短くなっているのではないだろうか??)
- 科学や技術以外の知識を含め、複数の知識が結合して起こる。
- 必要な知識の全てが用意されなければ必ず失敗する。
- 3つの条件がある。
- 社会、経済、認識の変化などあらゆる要因の分析。分析しなければ、何の知識が足りないのかがわからない。
- 科学者や技術者は自分がすべてを知っていると思い込んでいるが、多くの場合誤っている。
- 戦略。戦略には3つしかない。
- システム全体を自ら開発し、それを手に入れる
- システム全体ではなく、特定の市場を確保する(自ら創造する)。
- 重要な能力に力を集中し、重点を占拠する。産業が変化しても超然としていられる場所を探す。
- マネジメント。リスクの大きさをマネジメントで補う必要がある。
- 新しい知識のイノベーションが失敗する原因の多くはマネジメントの不足である。
- 社会、経済、認識の変化などあらゆる要因の分析。分析しなければ、何の知識が足りないのかがわからない。
- ほかのイノベーションはすでに起こった変化を利用するが、ここではイノベーションが変化を起こす。それによりニーズが生まれる。世に受け入れられるかどうかはわからない。
- 誰もがニーズがあると知っていても、実際に現れると抵抗されることもある。
- リスクが大きいが、それを予期せぬ出来事やギャップの存在、ニーズの存在といった機会とみなし、リスクを減らすことができる。