いろいろな交響曲第1番
作曲家にとって交響曲第1番はロックバンドにおける 1st アルバムと同じ。 Oasis の Definitely Maybe だし、 Weezer の blue album だ。 今回は、偉大なる作曲家たちの交響曲第1番を振り返ってみる。セレクションは適当です。
L. v. ベートーヴェン
1st アルバムとか言っておきながら、ベートーヴェンが交響曲第1番を発表したのは彼が30歳のとき。満を持しての交響曲である。
冒頭、ハ長調というど真ん中の調のくせに、属七のヘ長調から始まり、4小節目でようやく五度のト長調になる。異常だ。 そして10小節目でハ長調とみせかけてのト短調。序奏からしてもう名曲だ。スピード感あふれる第1主題も最高。展開部の変奏も楽聖としか言いようがなさすぎる。 第3楽章のスケルツォ(メヌエットということになっているが、実質スケルツォ)、私は古典派のスケルツォ楽章は退屈でしょうがないのだが、この裏拍感が支配するダイナミックな音楽、現代のロックバンドに見習ってほしいほどである。
F. J. ハイドン
交響曲の父ハイドン。彼は生涯で 104 番 (番号なしを含めると 108 曲らしい) までの交響曲を生み出した。 一聴してわかるとおり、完成度が高すぎる。どうやら彼が本当に最初に作曲した交響曲ではないらしい。 104 番まで作っておきながら、捨て曲が無いというのがありえない。
P. I. チャイコフスキー
最も人気のあるシンフォニストのひとり、チャイコフスキー。 彼の交響曲第1番は標題つきであることもあって演奏される機会もそこそこあるが、正直、地味だし演奏効果も低いと思う。 だが、たとえばフィナーレ弱奏部の煽り方など、所々に「こいつ、もしかしたら凄い作曲家になるのでは??」という期待感がある。 Happy Mondays の 1st のような、 Number Girl の SCHOOL GIRL BYE BYE のような、改めて聴くと大事にしたくなるような感じだ。
A. ドヴォルザーク
神が作ったかのような交響曲第9番「新世界より」は、史上最も完成度の高い交響曲であると認める人も多い。 そんなドヴォルザークの交響曲第1番、私は今回初めて聴いた。 まぁ...ちょっと...つかみどころが無いかな... 内声の充実度は当時からあったみたいね...
G. マーラー
マーラーは近代作曲家のなかでも最も人気のある人物といっていいだろう。 冒頭の宇宙的和音(ユニゾンだけど)、第2楽章の耽美なワルツ、既に彼の世界観が確立されている。ムカつく。フィナーレの大勝利感。何がベルアップだよ。最高だ。
J. シベリウス
私が最も好きな作曲家、シベリウス。世間の評価でいうと、後期の第4番以降の作品は洗練されていて完成度が高いといわれる。最もよく演奏される交響曲は第2番である。 (クレルヴォ交響曲という番号なしの大交響曲があるが、今回は無視する)
そんな彼の第1番は、初期衝動そのもの。これが俺の音楽だ。ロマンティシズムだ。たとえば交響曲第6番と比べると、全く別人の音楽である。 「シベ1は後期の作品と比べると音楽性が低いよね 笑」なんて言う人もいるが、この美しい第4楽章第2主題の前では、そんな戯言に価値は無い。
ブラームスどうしたよ!とか、交響曲といえばセーゲルスタムだろ!(そんな人いるか?)とかの声もあると思うが、今回はこのあたりで。